このクラブハウスは、アメリカの建築家Frank Lloyd Wright(1867~1959)の弟子であり工学院大学、東京藝術大学で教鞭をとった建築家天野太郎(1918~1990)の代表作品の一つです。天野は、自然と人間の心地よい関係を、建築の空間を通して探求し続けた建築家でした。

ゴルフ場は、コースという広大な自然環境に恵まれたロケーションを持っています。当時、この計画で天野は、「松林や緑の芝生にどのようにとけこんでくれるか」という言葉を記しており、建築と自然の融合を考えていたようです。このような考えに基づいてデザインされた外観は、自然の風景に馴染む低い水平線と、人を柔らかく包む円形でまとめ、静かな佇まいをしています。
ライトの下で自然の原理から建築を考えることを学んだ天野にとって、この場所は彼の思想を十分に表現できる環境でした。内部空間では、周囲の環境を引き込むように開口部をつくり、自然のなかに居るような開放性を有しています。
天野は、スポーツの場であり、娯楽の場であり、社交場であるこのクラブハウスが"美しい自然のなかにある"ということを最高の贅沢と考えたのではないでしょうか。
文: 平井 充
(略歴)
1974年北海道生まれ。2009年工学院大学大学院博士課程単位取得満期退学(初田研究室)。吉原設計事務所(旧天野吉原設計事務所)を経て、現在一級建築士事務所Drawing notes主宰。do.co.mo.mo_japan幹事、工学院大学客員研究員、東京工科専門学校講師(2004-2011)、有機的建築アーカイブ理事(2009-2011)。2010年『天野太郎の建築展』実行委員。